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NECグループの一員としてネットワークインフラの構築からAI、IoTといった最先端デジタルソリューションまで、幅広い分野のICTソリューションを展開するNECネッツエスアイ株式会社(以下、NECネッツエスアイ)。特に通信・ネットワーク分野においては、通信設備の工事・保守からシステムの設計・構築まで、国内屈指の技術力と実績を持つ。
同社は2014年6月に、保守事業のSCM機能およびICT製品LCM全般のサービス拠点となる「サービスデリバリオペレーションセンター(sDOC:エスドック)」を東京湾岸エリア辰巳に新設した。sDOCには主に、24時間365日の物流機能に加え、技術評価やSI、 保守や修理まで一気通貫で対応し、価値の高いワンストップサービスを提供している。しかしそれだけでなく、開設当初から「ソリューションデザインセンター(開設当初の名称は「SDNラボ」、2016年に改称)」と呼ばれる技術検証施設も併設している。
その運用を担当するNECネッツエスアイ DXソリューション事業本部 品質戦略本部 SIサポートグループ ソリューションデザインセンター統括担当課長 久井秀文氏は、同センターの役割について次のように説明する。
「弊社のお客様やパートナー企業、NECの技術者の方々が、主にSDNやIoT、サーバ仮想化といった技術分野の技術検証が行える環境を提供しています。特にネットワーク関連の検証設備は充実していて、通常は構築にかなりのコストや手間を要するSDNのネットワーク環境やIoTセンサーネットワークの環境に手軽にアクセスして、素早く検証作業を行っていただけます」
sDOCの開設当初から運用を続けてきたソリューションデザインセンターだったが、月日が経つうちに設備が老朽化してきたため、2020年に環境を刷新することとなった。しかし当時は、刷新作業のための人手が足りなかったという。また近年になり、クラウドをはじめとする新たな技術領域の検証ニーズも社内外から寄せられていたため、そうした技術を扱えるエンジニアを新たに採用する必要性にも迫られていた。
そこで「ネットワークの設計・構築ができること」「新技術の習得に意欲的なこと」といった条件を提示して人材の応募を行い、採用されたのが、ヒューマンリソシアのGITサービスを通じて紹介を受けたネパール出身のエンジニア、アニルさんだった。
NECネッツエスアイ DXソリューション事業本部 品質戦略本部 SIサポートグループ グループマネージャー 小林俊弘氏は、初めてアニルさんと会った印象を、次のように述べた。
「大学でコンピュータやネットワークの基礎知識をしっかり身に付けていましたし、若いので未知の技術にも意欲的に取り組んでもらえるのではないかと考えました。また見た目の印象がとてもやさしそうで真面目そうだったので、社員やお客様と接する機会が多い当センターの仕事にもマッチしていると考えました」
こうしてアニルさんは2020年6月から、久井氏とともにソリューションデザインセンターの検証環境の運用や構築の仕事に従事することになった。その働きぶりについて、久井氏は「基礎知識がしっかりしているので、業務で必要とされる技術・製品知識の吸収がとても速いですね。特に大学でネットワークの勉強をしていただけあり、ネットワークの基礎知識が身に付いている点は本当に助かっています」と高く評価する。
また普段のコミュニケーションも、当初は日本語の会話に多少のぎこちなさはあったものの、短期間のうちに上達し、今では専門用語も含めて日本語でかなり流暢にやりとりできるようになったという。
アニルさんのようなネパール出身の海外エンジニアが日本企業で働く例は、まだ決して多いとはいえない。しかし久井氏は、「ネパールは隣国インドとのつながりが深いので、きっとインドと同じくIT教育に力を入れているに違いないと思いました。従って『ネパールだから不安』ということはありませんでした」と述べる。実際、アニルさんは大学でコンピュータ・ネットワーク工学の学位を修め、卒業後に母国でエンジニアとして働いた経験もあるため、基礎知識や素養の面ではまったく問題なかったという。
そんなアニルさんが日本行きを決めたのは、ヒューマンリソシアが母校の大学で開いたGITサービスの説明会に参加したのが直接のきっかけだったという。
「もともと日本の文化や働き方に興味があり、欧米やオーストラリアで働くよりはるかに刺激的で、自身の成長にとってプラスになると考えました。実際には、研修を数カ月受けたとはいえ、日本企業の現場で働くのは決して簡単なことではないのですが、とてもチャレンジングでむしろ興味を掻き立てられました。チームワークや細かな報告を重視する日本の職場文化は母国のそれとはまったく異なり、とても新鮮で刺激を受けています」
日本語スキルに関しても、「職場の方々が分かりやすい日本語で話してくれるおかげで、短期間のうちに日本語スキルを伸ばすことができました」とアニルさんは話す。既に日本語能力試験(JLPT)のN3認定を取得したほか、大学時代にはRed Hat認定資格を、そして来日後にシスコシステムズのCCNA(Cisco Certified Network Associate)の資格も取得した。
「GITサービスではスキルアップのためのさまざまなトレーニングを提供してくれますし、個人的にも勉強は欠かさないよう心掛けています。テクノロジーは日進月歩で進化していきますから、私たちエンジニアもキャッチアップできるよう常に学び続けなくてはいけません」(アニルさん)
現在ではネットワークから仮想化、クラウドに至るまで、幅広い分野のインフラ技術を扱うICTエンジニアとして日々急速な勢いで成長しているアニルさん。まだ実務経験は浅いものの、久井氏はそのポテンシャルや将来性に太鼓判を押す。
「現在日々の業務を通じて、さまざまな製品を用いたインフラ設計・構築、トラブルシュートなどの経験を積んでもらっています。一般的に、一人前のインフラエンジニアになるには最低でも3年間の実務経験が必要だと言われていますが、アニルさんはもともと優れた素養を持っている上、新たな分野や課題に意欲的に取り組んでくれるので、極めて短期間のうちに成長してくれるのではないかと期待しています」
また日本語スキルも、周囲の予想をはるかに上回るスピードで上達しているため、いずれはセンターの利用者に対する説明や案内の業務も任せてみたいという。
一方小林氏によれば、アニルさんが職場に来たことによって思わぬ副次的な効果も得られたという。
「技術情報をネットで調べる際、私たち日本人は日本語のサイトを中心に調べますが、アニルさんは英語のサイトを直接見にいきます。やはり日本語のサイトより英語のサイトの方が情報の量・質ともに圧倒的に上ですから、情報収集力は日本人の技術者より優れていると感じます。実際、日本人技術者が困っていることを英語サイトでさっと調べてアドバイスしてくれたりするので、とても助かっています」
こうした効果は、アニルさんを採用してみて初めて分かったという。久井氏も、「外国人だから」という理由だけで採用を敬遠するのは、実にもったいないと話だと述べる。
「日本人は英語に苦手意識があるので、外国人エンジニアに対して必要以上に高い日本語能力を求める傾向がありますが、実際に採用してみると日本語能力はさほど大きな問題にはなりません。それ以上に、技術力や英語力に優れ、モチベーションの高い人材を雇用できるメリットの方が大きいと感じているので、今後もアニルさんのような方とはぜひ末長いお付き合いができればと考えています」