Interview with GIT engineer
Interview with GIT engineer
そして高校生になると、分解だけでは満足できなくなったと言う。
「超小型ワンボードコンピューターの『Arduino』にセンサーなどを接続したシステムを自作し、それを動かすためのプログラムも書くようになりました。自分で何かを組み立てて動かすことが好きでしたね」
こうして、ハードウェアとソフトウェアの両方を1人で作り上げる楽しさに目覚めたホルヘ氏は、大学では、両技術の学べるテレマティクス工学を専攻した。そして、大学時代のインターンシップや研究室、アルバイトなどを通じて、幅広い知識を体得することになる。
「テレマティクス工学は、通信サービス用ネットワークに必要なハードウェアやソフトウェア、プロトコルといった技術を勉強します。在学中に3年半続けたアルバイトでは、Webマスターになり、サイトの構築や運営、管理など、講義で学べない技術を覚えました。インターンでお世話になった会社では、物理サーバー設定やネットワーク構築、ロードバランシング管理、仮想マシンと仮想化環境の運用など、宇宙機関向けネットワークのインフラエンジニアとして働きました。スペイン語と英語の能力をいかして、エクアドルとペルー向け医療系NPOのデータ管理プロジェクトをボランティアで担当したこともあります」
VR/AR技術は、大学の研究室で学んだという。そしてこの研究室での経験が、卒業後のキャリアに直結する。指導教官から誘われ、母校でAR研究者となったのだ。
「研究室では、大学生の学習能力向上を目的とするクイズARアプリを作りました。『Pokémon GO』に似た、GPS位置情報を使うARアプリで、クイズに答えて敵を倒していくゲームです。私は、AR機能を持つAndroidアプリと管理用Webアプリを開発し、Unity C#、WebGL、JavaScript、HTML、CSS、PHP、SQLなどを学びました」
このARアプリは学生たちにも大好評で、研究成果の論文は科学雑誌に掲載されたという。
スペインにはIT分野で欧州トップレベルの有名大学もあり、ITを勉強する若者が多いという。ところが、せっかくITスキルを身に着けても、実は活躍できる場は少ないそうだ。
「IT企業は少なく、あっても条件がよくありません。そのためITエンジニアは、面白くて高い収入が得られる仕事を求め、ほかの国へ行きます。行き先は、米国やフランス、ドイツが多いですね」
では、スペインを出て働くことにしたホルヘ氏は、なぜ日本を選んだのだろうか。
日本に興味がわいたきっかけは、小さいころ大好きだった日本のアニメで、その中にでてくる「日本の生活が、スペインと大きく違っているところが面白かった」と話してくれた。日本行きを決めたのは、大学に入ってからだという。
「文化の異なる国を体験したいのと、ほかの国の言葉を勉強したい、という2つの理由がありました。英語は話せますし、新しい言葉を勉強したいと思いました。そこでドイツと日本に絞ったのですが、小さいころから日本のものに親しんでいたこともあって、最終的に日本で働くことにしました」
こうしてホルヘ氏は、大学在学中から、日本で働く準備を着実に進めていった。
GITエンジニアとして日本で働き始めたホルヘ氏は今、世界的大企業の社運を左右するような最先端プロジェクトに参加し、VR対応シミュレーターの開発を手がけている。
「AIセンサーを搭載したカメラで捉えた人の動きを、仮想空間のアバターへリアルタイムに反映させるVRシステムを開発しています。ほかの研究チームは、このシステムの上でさまざまな研究開発を行います。縁の下の力持ちといった仕事です」