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NTTがさまざまな分野において進める研究開発活動のうち、主に基礎研究の分野を担っているのが先端技術総合研究所だ。通信技術のみならず、AIや量子コンピュータといった多種多様な分野の研究開発を手掛けているが、その中でも光通信や無線通信、ネットワーク制御などの分野で最先端の研究を行っているのが未来ねっと研究所である。
NTTでは現在、次世代の高速無線・光通信ネットワークをベースにした新たなコミュニケーション基盤の構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」を提唱しており、その実現のためには、未来ねっと研究所が現在進める光および無線通信の基礎研究の成果が欠かせない。そんな国内最先端の研究開発拠点において、ヒューマンリソシアの若き海外ITエンジニアが活躍している。
同研究所 フロンティアコミュニケーション研究部 アドバンストネットワーキング研究グループ 主幹研究員 白井大介氏は、そもそも外国人エンジニアを採用するようになった経緯を次のように振り返る。
「もともと未来ねっと研究所では、外国人のインターン生を数多く迎え入れていました。やはりわざわざ母国から海を渡って日本まで来て働きたいと考える外国のインターン生は、皆揃って優秀で意欲的な方ばかりです。私たち自身にとってもいい刺激になるだけでなく、私たちの研究を大いに助けてくれることもあります」
これまで迎え入れた海外出身のインターン生はみなモチベーションが高く、優秀な人材が多かったのでいい印象を持っていたという。しかしその一方で、外国から独自のルートでインターン生やエンジニアを迎え入れようと思うと、どうしても選考や入国手続きなど煩雑な対応が必要となり、ハードルは決して低いものではなかった。そんな折知ったのが、ヒューマンリソシアのGITサービスだった。
「外国籍の若くて優秀なエンジニアを、ヒューマンリソシアさんの社員として派遣していただけるので、弊社側の負担を最小限に抑えながら、優秀なエンジニアを活用できます。これは『私たちのニーズにぴったりのサービスだ』と考え、早速利用させていただくことにしました」(白井氏)
現在白井氏のグループでは、バングラデシュから来た若手エンジニアのアノワル氏が働いている。2020年1月に来日し、ヒューマンリソシアの研修を2カ月間受けた後に、同年3月から未来ねっと研究所で働き始めた。
アノワル氏は母国の大学を卒業した後すぐに来日したため、企業で働いた経験はなく、実務経験は大学在学中のインターンのみだった。しかし白井氏は「実務経験は重視していなかった」という。
「研究所の仕事は一般的な製品開発業務とは異なり、上からの指示にただ従うだけではなく、自身でいろいろ考えて工夫しながら進めていかなくてはなりません。その点アノワルさんは、初めてお会いしたときに『地頭がとても良くて自分で考えて行動できる人だな』と感じたので、ぜひ一緒に働きたいと思いました」(白井氏)
白井氏のグループでは現在、光ネットワークを用いた4K/8K高精細映像伝送を含む高速大容量メディア処理技術の研究を行っているが、アノワル氏はこの研究成果をWebの画面を通じて可視化したり、各種機器を制御するためのインタフェースの開発を担当している。通信技術の知識やWebアプリケーション開発経験の少なかったアノワル氏だが、独自に勉強に勤しみ急速にキャッチアップしていった。使用するプログラミング言語も、Python, JavaScript, HTML, CSS, C++などをはじめ、幅広い。白井氏のグループでともに研究開発業務に従事する研究主任の持田康弘氏は、驚きを込めて次のように述べる。
「アノワルさんにとって未経験の分野の実装技術であっても、作業を依頼した次の日にはもう簡単な実装ができるようになっているので、学習スピードの早さには本当に驚かされます。また私たちからいちいち事細かに指示を出さなくても、自身でいろいろ考えて判断しながら自走してくれるので、とても助かっています」
なお、アノワル氏と白井氏、持田氏らとの業務上でのコミュニケーションは、主に英語を使って行っている。未来ねっと研究所の研究員の多くはもともと英語に長けており、たとえ英会話は苦手でも、英語の読み書きに関しては皆一定以上のスキルを持っているため、アノワル氏との技術的な内容に関してのコミュニケーションは、もっぱら英語を用いているという。
「毎日30分ほどアノワルさんと簡単なミーティングを行って進ちょく状況を確認したり相談事がないかを確認しています。またそれ以外にもメールやチャットで頻繁に連絡を取り合っていますが、基本的なやりとりには英語を使っています。もちろん日本語を使ったほうが、アノワルさん自身にとっては日本語の勉強になるとは思いますが、業務に関して言えば当初から日本語スキルよりむしろ英語スキルを重視していました」(白井氏)
その点アノワル氏の出身国であるバングラデシュでは第二公用語として英語が採用されており、大学の講義もすべて英語で行われているため、アノワル氏自身もとても流暢な英語を操る。また社内コミュニケーション以外でも、技術面で分からないことが出てきた場合はネットで英語の技術情報を調べたり、場合によってはオープンソースのコミュニティにアクセスして開発者と直接コンタクトを取って修正依頼を出すなど、英語スキルをフルに活用しているという。
アノワル氏自身も、現在の日本での仕事にとてもやりがいを感じているという。「もともと子どものころから日本は技術立国だと聞かされて育ったので、いつか日本でエンジニアとして働いてみたいと考えていました。通信やWebアプリケーション開発の技術は大学では深くは学んでおらず、未来ねっと研究所に来て初めて手掛けましたが、とても面白みを感じているのでさらに勉強を重ねてスキルを磨いていきたいですね」
ちなみにアノワル氏はもともと母国の大学で論文を国際会議で発表したり、国際コンペに参加して世界10位・アジア2位の成績を収めるなど、優秀な若手研究者としての顔も持つ。
「今の研究所での仕事は、とても自分に合っていると感じます。また白井さんや持田さんは英語が堪能なので、コミュニケーション面でも不便を感じることはありません。これからも引き続き未来ねっと研究所でエンジニアとして成長していきたいですね」(アノワル氏)
ちなみに白井氏はアノワル氏を含め、過去に何人かのGITエンジニアと職場をともにした経験を持つが、「皆総じて日本の職場への適応力が高い」と高く評価する。
「恐らくヒューマンリソシアさんの研修のおかげだと思いますが、皆さん日本語がうまく、『よく短期間のうちにこれだけの語学力を身に付けられるな』といつも感心していました。また、日本人特有の考え方やカルチャー、日本流のマナーについてもよく理解されているなという印象を持っています」(白井氏)
なお、アノワル氏が未来ねっと研究所で働き始めたちょうどそのころから、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、同研究所では在宅勤務体制を敷くことになった。そのためアノワル氏も原則、ずっと自宅で仕事を行ってきた。しかし今後、コロナ禍が収束して出社が可能になれば、ぜひもっと広い範囲の仕事を任せてみたいと白井氏は抱負を語る。
「在宅勤務では機器を直接触る仕事はできませんから、どうしても仕事の範囲が限られてしまいます。しかしコロナ禍が収束して出社が可能になれば、ぜひアノワルさんにも新たな分野の仕事にどんどんチャレンジしてもらいたいですね。もちろんその際には私たちも迎え入れる準備を万端にして、互いに異なるカルチャーがうまく混ざり合うことで職場の多様性を高めていければと考えています」