customer case
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――キヤノンITソリューションズが、外国人エンジニアを求めていた背景と、募集に当たりGITサービスを活用した経緯についてお聞かせください。
玉井氏 当社では、「Beyond Japan」というスローガンを掲げ、海外でのビジネス拡大を推進しています。そうした中、日米双方で販売する自社製品の開発業務を進めていたところ、米国のグループ会社が請負業務を受注し、プロジェクトの拡大と、それに伴う開発要員の補充が必要になりました。米国のお客さまということで、日本語だけではなく、英語でもスムーズに仕事を進められ、なおかつJavaに関する高いスキルを持ったエンジニアが急きょ必要となったのです。
しかしながら、海外のスタッフと一緒に進めていくビジネスの経験がまだまだ豊富とは言えず、要員の募集に課題を感じていたところ、ヒューマンリソシアさまからGITサービスをご提案いただきました。
――これまで、外国人スタッフを加えてのプロジェクト経験はそれほど多くなかったとのことですが、特にコミュニケーション面などでの不安はありましたか。
玉井氏 当初、コミュニケーション面での不安がなかったかといえば「あった」というのが正直なところです。ただ、当社のプロジェクトリーダーは英語ができましたし、米国向けビジネスの拡大を目指す上で、外国人エンジニアを増強することは以前から視野に入れていました。不安よりも、ビジネス上の必要性から、外国人エンジニアの増強は進めていかねばなりませんでした。
――今回、キヤノンITソリューションズで採用されたGITサービスとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
大西 GITは「Global IT Talent」の略です。日本で働きたいと考えている、海外の優秀なエンジニアを採用し、日本のクライアントに常用雇用型派遣として活用いただくサービスです。
――GITエンジニアの構成はどのようになっていますか。
大西 男女比で言えば、現在は男性7割に対し女性3割といった比率です。以前は、男性エンジニアが圧倒的に多かったのですが、ここ1年ほどで「日本で働くこと」に対する、女性エンジニアの関心も高まっているようです。話を聞いてみると、日本の治安の良さを代表とした「安心、安全」をメリットとして挙げてくれる方も増えており、そうした認知が高まっていることもうかがえます。
出身国としては、シンガポール、マレーシア、タイ、ミャンマーなどのASEAN諸国をはじめ、インドやヨーロッパ、さらにはアメリカやカナダ、メキシコやブラジルといった北南米など世界33カ国のエンジニアを採用しています。
――そうしたエンジニアの方々は、英語だけではなく日本語も使えるのですか。
大西 日本で働きたいという方については、少なくとも、JLPT(日本語能力検定)におけるN3~N4、いわゆる「日常生活に支障がないレベル」の日本語力を有していることを条件としています。そのため、母国語に加え、英語と日本語を話せるエンジニアが多いです。
――GITを導入している企業の業種や職種には、どのような傾向がありますか。
大西 現在、クライアント約120社で活用いただいていますが、その約半分はシステムインテグレーターなどシステム系の会社です。次に多いのが製造業系の企業です。
――エンジニアにはさまざまな職域がありますが、GITエンジニアはプログラマーが中心なのでしょうか。
大西 GITエンジニアの中心は、大学卒業後2~3年程度の若いエンジニアです。プログラマーが多いですが、フロントエンド系、バックエンド系はもちろん、フルスタックのエンジニアも多く抱えています。また、AIや機械学習に精通したデータサイエンティストも多く在籍しています。プログラミング言語としては、一番多いのがJava。その他にも、C#、PHP、C++、C言語、そしてクライアントからのニーズが非常に高い、Pythonプログラマーも活躍しています。
―ヒューマンリソシアでは、エンジニアの採用に当たって「こういった人材を求めている」といったコンセプトは設定しているのでしょうか。
大西 スキルやキャリア、出身国はバラエティーに富んでいますが、共通して最も重要だと考えているコンセプトは「日本が好き」で「日本に好意的な印象を持っている」人であることです。
最初に少し話しましたが、日本の治安の良さや、日本人のまじめさ、誠実さなどへの印象から、日本人と一緒に働きたいという外国人エンジニアは多いです。そうした方が日本へ来て、クライアントであるキヤノンITソリューションズさまのような企業で働くと、その受け入れ態勢などから、その思いをより一層強めてくれます。
――ちなみに、日本に対して好印象を持っているかどうかは、どのように評価しているのでしょうか。
大西 それについては面接を通じて、本人から十分なヒアリングを行うようにしています。余談ですが、各国に輸出されているマンガやアニメを通じて日本に関心を持ち、それらを通じて日本語を勉強された方も多いです。
――キヤノンITソリューションズとしては、GITサービスのどういった部分が活用の決め手になったのでしょうか。
玉井氏 新たに加わっていただくエンジニアの方には、コミュニケーション言語としての英語と日本語、さらにプログラム言語としてJavaのスキルを求めていました。われわれ自身も国内でそうしたスキルを持つ方を独自に探してはいたのですが、ヒューマンリソシアさまからご提案いただいた方のほうが、いずれのスキルも圧倒的に高かったというのが採用の理由です。
プロジェクトでは、段階的に採用人数を増やしており、現在では5人の方に、サーバサイドでJava実装を行う海外プロジェクトに参加してもらっています。1人目の方は、2017年の10月から参加してもらっているのですが、この方の英語、日本語、Javaのスキルが非常に高く、それまでにあった懸念が全て払拭(ふっしょく)されました。そうした経緯もあって、2人目以降の方はスムーズに活用が進んでいます。
――外国人エンジニアを迎えるに当たって、会社として対応したこと、気付いたことなどはありましたか。
玉井氏 在留資格の取得といった、入国や就業に関わる手続きについては、ヒューマンリソシアさまで手配してもらえたので、特に心配はありませんでした。われわれとしては、入社してくるエンジニアたちの背景にある文化や宗教の違いについて学び、彼らを受け入れる態勢を作ることが必要だと再認識しました。
例えば、エンジニアの一人にムスリム(イスラム教徒)の方がいます。そのため、礼拝時間に困らないよう、特定の会議室を礼拝室として確保するといった対応を行いました。また、宗教によって教義上、口にできない食べ物などもあります。会社として行う懇親会的な催しは、そうした人たちも一緒に参加して楽しめる場にすることを意識するようになりました。
仕事を進める上では、特にコンプライアンスやセキュリティに関する会社としての決まりごとを順守する必要がありますが、これらをきちんと伝えられるような体制づくりが必要でした。これらの教育は日本人のエンジニアに対しても行っていますが、マニュアルはこれまで日本語で書かれたものだけだったのです。
日常生活が問題ないレベルの日本語会話ができる方であっても、日本語のマニュアルを読んで理解するのには時間がかかるケースが多いです。内容を要約して英語に翻訳したり、英語でレクチャーを行ったりすることで、日本人エンジニアと同じレベルで、コンプライアンス、セキュリティに対する規定を理解し、意識を持ってもらえるよう工夫しています。
――受け入れ手続きについてはヒューマンリソシア側で手配したとのことですが、そういったこともGITサービスの一部なのでしょうか。
大西 はい。弊社にて採用を決定した段階で、在留資格取得に関する日本での手続きをヒューマンリソシアが行います。来日時には、航空券の手配から空港への出迎え、給与の振込先となる銀行口座の開設、社宅となる住居の手配とそれに伴う行政手続き、手続きに必要になる印鑑の準備などを支援しています。来日後は、まずはヒューマンリソシアへの出社となりますが、最初は住居から会社までの通勤方法、配属先のプロジェクトが決定してからは、派遣先への模擬的な通勤なども支援しています。配属前の研修では、グループ会社であるヒューマンアカデミーの教育メソッドを活用し、日本語力のレベルアップを図っています。
派遣先プロジェクト開始後も、エンジニアの求めに応じて、日本独自の医療サービスや行政サービス、引っ越しの際などに手助けをするということもしています。
エンジニアにとっては、日本で暮らしながら仕事ができるようになることが最初の目標ですし、クライアントである派遣先にとっては、不自由なく仕事をしてもらい、エンジニアとしてのスキルを100%以上発揮してくれることが、外国人エンジニアを採用し、派遣活用する最大の目的です。それ以外の、生活支援部分においては、可能な限り、ヒューマンリソシア側で引き受けて、それぞれの目標に集中していただきたいという思いがあります。
後編に続く→