customer case
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NTTグループの一員として、主に情報通信に関わる建築物や建物・電力設備の設計・監理、保守・維持管理の業務を担うNTTファシリティーズグループ。その中で、主に首都圏エリアの事業を任されているのがNTTファシリティーズ中央だ。
情報通信インフラが集中する首都圏エリアをカバーする同社では、数多くの通信インフラ施設の機能を維持するため、改修・更改のプロジェクトが多数進行している。近年ではこれらの業務領域において「BIM」の取り組みに力を入れている。
BIM(Building Information Modeling)とは、3次元の建物モデルに、仕上げ、コスト等の属性データを追加した建築物のデータベースを、設計、施工から維持管理まであらゆる工程で活用する新しいワークフローとされている。NTTファシリティーズでは、設計だけでなくその後の施設維持管理分野での活用を見据えて建物データベースを更新し続けるという考え方のもと、BIM(Building Information“Management”)を推進している。
これにともないNTTファシリティーズ中央では、2019年7月に「デジタルトランスフォーメーション(DX)」実現の主要施策としてBIMの本格的な導入を目指し、それまで社内各部署に散在していたCADオペレータを一同に集めた「設計情報管理担当(通称:FIMセンター)」という組織を新たに発足させた。
しかし、同社の首都圏事業本部 統括マネジメント部 設計情報管理担当 担当部長 齋藤貴之氏によれば、発足当初は人員不足に悩まされたという。
「FIMセンターの主な役割は、設計者から渡された建物・設備の設計指示情報・建物の属性情報等を基に、オペレータがBIM上で3次元のモデルを作成することにあります。しかしCADとBIMではオペレータに求められるスキルセットにかなりの違いがあり、かつBIMはCADより扱う情報の種類がかなり広範に渡るので、自ずと作業量も多くなります。そのため、当初はオペレータのスキルや人数が明らかに不足していました」(齋藤氏)
そこで同社は急遽、BIMのスキルを持ったエンジニア人材を社外からも獲得することにした。さまざまな人材サービス会社に相談した中で、特に興味を惹かれた提案の1つが、ヒューマンリソシアのGITサービスだった。GITサービスは主に外国人のITエンジニアを紹介・派遣するサービスだが、近年では建築・建設エンジニアの派遣も行っており、特にBIM分野には力を入れている。
GITサービスの紹介を受けた際の印象について、齋藤氏は次のように振り返る。
「BIMの活用は日本より海外の方がはるかに進んでおり、同業他社でも外国人のBIMエンジニアを積極的に採用するケースが増えてきています。そのため、外国人エンジニアを受け入れるということに対する抵抗感はありませんでした」
日本語によるコミュニケーションスキルに全く不安がなかったわけでなく、受け入れ側としても英語をはじめとした語学力に自信があったわけではなかったものの、ヒューマンリソシアのバックアップ体制がしっかりしており、かつ紹介された人材の多くが既に実務経験があったり、大学で建築を学んだ経験があったため、「貴重なBIM人材として弊社で活躍していただけるのではないかと考えました」(齋藤氏)という。
こうして2019年7月にミャンマー出身のヤミン氏とウェイ氏、そして同年12月には同じくミャンマー出身のチョー氏がBIMオペレータとして同社で働くことになった。ヤミン氏とウェイ氏は既にCADオペレータとしての実務経験があり、ウェイ氏はNTTファシリティーズグループが導入しているBIMソフトウェア「Revit」を使った実務経験も持っていた。またチョー氏も専門学校でCADを学んだ経験があり、かつ大学で土木工学の学位を取得している点に、高い期待を持ったという。その後同じくミャンマー出身のヌェ氏が加わり、現在では4名のミャンマー出身者が活躍している。
BIMオペレータとして同社で働き始めた当初は、まずは実務に慣れるために既存の建築物や設備をBIMモデル化する「トレース作業」を担当したGITエンジニアたちだったが、瞬く間にコツやノウハウを吸収し、目覚ましいスピードで成長を遂げていったという。NTTファシリティーズ中央 首都圏事業本部 統括マネジメント部 設計情報管理担当 主査 窪田将希氏は、その目覚ましい成長ぶりを次のように語る。
「他のオペレータと比較しても、アプリケーションの利用方法の習得スピードが極めて早いという印象でした。しかも単に操作を覚えるだけでなく、皆さんもともと建築の実務や知識をお持ちだったので、図面から建物・設備の実物を想像するスキルもとても高いと感じました。そのため、単に既存の建築物をモデル化するだけのトレース業務から、次の段階の『BIMによる改修設計図面の作成』へと早々にステップアップしてもらいました」
さらにヤミン氏に関しては、仕事を始めた当初はまだ不安も若干残っていた日本語のコミュニケーションスキルも目覚ましい上達を遂げ、現在ではBIMオペレータと設計者との間に立ち、BIMを用いたプロジェクト進行の調整を担当するとともに、他の2人のGITエンジニアのマネジメントも行うリーダーへとステップアップを果たした。
そんなヤミン氏は、母国ミャンマーの工科大学で土木建築を学んだ後、日系の建設会社に就職して土木CADオペレータとして働いていた。このときの経験がきっかけで日本への興味が湧き、「日本で働いてみたい」という思いが日に日に募っていったという。
「日系企業で働くうちに日本の文化と日本人の働き方に興味を持ち始め、『いつか日本で働いてみたい』と考えるようになり日本語の勉強を始めました。そんな折、ヒューマンリソシアのGITサービスの説明会がミャンマーで開かれ、参加してみたところ『日本での仕事や生活をしっかりサポートしてもらえるので、これなら安心して日本で働けそうだ』と思ったので、思い切って応募してみることにしました」(ヤミン氏)
こうして2019年にGITエンジニアとして日本の地を踏んだヤミン氏は、ヒューマンリソシアで日本語研修とビジネスマナー研修、BIM研修を受講した後、NTTファシリティーズ中央でBIMオペレータとして働くことになった。
「働き始めた当初は、日本語の専門用語がなかなか理解できずに苦労しましたが、今ではむしろ日々新しい言葉を勉強できるのを楽しめるようになりました。これからもさらにBIMと日本語のスキルを向上させて、職場の皆さんに認めてもらえる存在になりたいと思います」(ヤミン氏)
ヤミン氏以外の3人も、日本語のコミュニケーションスキルはまだヤミン氏には若干及ばないものの、BIMオペレータとしての実務スキルはとても高いと窪田氏は評価する。
「我々の組織では、建築・設備を隔てなく扱う設計を行う必要がありますが、大半のオペレータはどちらかを得意とする一方、もう片方には苦手意識を持つ方が少なくありません。しかしウェイさんやチョーさんはどちらの分野も苦にせず扱えるので、貴重な戦力として高く評価しています」(窪田氏)
GITエンジニアたちの能力の高さと、成長スピードの早さを実感した同社は、今後は日本語のスキルをさらに伸ばしてもらい、ヤミン氏のようにマネジメント業務もこなせるようなエンジニアに成長してくれることを期待しているという。さらに中長期的には、BIMだけでなくICTツールやプログラム開発もこなせる外国人エンジニアの活用もぜひ視野に入れていきたいと齋藤氏は抱負を語る。
「将来的にはBIMを他のシステムと連携させて業務の自動化を図ったり、BIMを中心に社内のさまざまな業務をワークフローでつないでいきたいと考えています。そのためには、今後はBIMだけでなくICTスキルも備えた人材が求められてくると思います。もし将来、GITサービスを通じてそうした人材が獲得できれば、弊社のDX推進に大きく貢献してくれるのではないかと期待しています」(齋藤氏)